食農学類長・生源寺眞一あいさつ

縦のつながり、
横のつながり

農学実践型教育プログラムがスタートしました。農学系としては小さな学部だけれども、福島大学ならではの特色ある学びの場を創り出す。これが私たち食農学類のねがいです。ほかの農学部にはない特徴として、例えば1年生の前期から、つまり入学と同時に農場基礎実習が設定されている点があります。作物の生産に取り組むだけでなく、森林の資源や環境を観察し、食品製造の基礎を学ぶ実習などがセットされています。そして、2年生の後期から農学実践型教育が始まるわけです。農林業や食品産業などの現場との密接な交流のもとで、1年半にわたって具体的な課題に挑戦する必修科目であり、これも食農学類ならではの学びの場なのです。


2年生の後期は専門的な勉強が本格化する時期であり、学生の皆さんは専門コースに所属することになります。すなわち、生産環境学・農業生産学・食品科学・農業経営学の4つのコースです。一方、農学実践型教育は9つの市町村をフィールドとして実施され(2つの町は集中型)、それぞれのフィールドにはコースの異なる学生が混成部隊として通うことになります。全員が参加する教員についても、コースの混成となる点では共通しています。


ここにも食農学類としての特徴があります。それは教育と研究の両面で学際性を大切にする姿勢です。9つのフィールドで具体的な課題に取り組むわけですが、そこでは異なる専門的な観点からの多角的なアプローチこそが重要なのです。さらに学生の皆さんには、自分の専門分野の知見をほかの分野の仲間に分かりやすく伝えることを学んでほしいと思います。私自身の学生時代の思い出なのですが、ほかの領域の友人にうまく説明できず、理解の浅さを自覚したことがありました。


農学実践型教育は学生間の交流の場であり、学生と教員のコミュニケーションの機会でもあります。そして言うまでもなく、現地との緊密なつながりこそが優れた成果を生むことになるはずです。9つの市町村の皆さんからは、すでに物心両面で貴重なご支援をいただいております。そんな温かいサポートに具体的なかたちで応えること。これが農学実践型教育の定着に結びつき、この国の近未来の農学教育に一石を投じることになるものと考える次第です。

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